1 はじめに

HTML Help WorkshopAccess97からAccess2000へのバージョンアップでは、起動直後のデータベースウィンドウのデザインから始まり、数多くの機能アップ、機能追加が図られています。その中で特筆すべき1つが、「データアクセスページ」に代表されるWeb機能の強化ではないでしょうか?。Access95の頃から、テーブルなどをHTMLファイルとして出力する機能はアドインとして提供されていましたが、本格的なデータアクセスも含めたWeb対応は、Access2000からといってもいいでしょう。

しかし、Webの技術を取り入れたのはAccess本体だけではありません。ヘルプファイルもHTMLヘルプへと変貌しているのです。Accessに関係したヘルプファイルには、Acmain9.chm、Acadp9.chm、Jetsql40.chm といったものがあります(これらはProgram Files\Microsoft Office\Office\1041に保存されています)が、これらはみな、従来の.HLPから.CHMへと拡張子が変っていることが分かります。

では、実際にヘルプを使ってみて、何が変わっているのでしょう?。確かに、別のトピックへジャンプする部分の文字列(ホットスポット)は、従来の.HLPでは下線付きの緑色の文字で表されていましたが、.CHMでは、WebブラウザなどでHTMLを表示した際のリンクと同様に、デフォルトでは青色の下線付きの表示に変わっています。しかし、ここをクリックすれば別のトピックへジャンプするという基本機能に何ら違いはありません。いやむしろ、HTMLやWebブラウザによって一般化したこのハイパージャンプの機能も、ヘルプファイルでは初期の頃から使われていたのです。

では、HTMLヘルプのメリットとはいったい何でしょう?。使用感としては、特にメリットがあるようには思えません。むしろ、その起動の遅さ、ジャンプの遅さ、さらにキーワード検索の遅さなど、デメリットばかりが目について仕方ありません(私だけでしょうか?)。もしも、従来のヘルプの作り方を理解していて、作成手順に馴染んでおり、その環境も整っているのなら、HTMLヘルプに切り替えることによるヘルプ開発上のメリットも、あまりないように思います。

一方、ヘルプなど作ったことがないという開発者にとってはどうでしょうか?。
  • 別のトピックへリンクする文字列には二重の下線を引く
  • そのすぐ後ろにリンク先のトピックID(コンテキスト文字列)を隠し文字として記入
  • 各トピックのトピックIDは"脚注"として挿入しておく
  • こんなややこしい手順でヘルプの元となる文書をWordか何かで作って.RTFで保存する
  • RTFをコンパイルして初めて、その表示内容やジャンプなどの動作を確認できる
ヘルプ作成のオーサリングツールなどを使っていれば話は別ですが、これが従来のヘルプファイルの作成方法です。これに対して、HTMLヘルプの作り方といったら、とにかくまず、HTMLファイルを作ればよいのです。最後にコンパイルしてヘルプファイルを作る、という点は従来と変わりありませんが、そのソース作成の段階では、ヘルプを作るということを意識することなく、ごくごく普通のHTMLファイルを作ればよいのです。Microsoft製品なら「FrontPage」があります。オンラインソフトでも多くのHTMLエディタが入手できます。テキストエディタが一番やりやすいという人もいます。HTMLを作成する環境は、現在では十分すぎるほど整っているといえるでしょう。しかも、その動作確認やデバックも非常に簡単です。HTMLファイルをWebブラウザで読み込めばよいのです。ジャンプの動作も直ちに確認できます。FrontPageのような製品なら、そのウィンドウ上でプレビューすることもできます。「HTMLファイルも作ったことがない!」と言われると困ってしまいますが、RTFでソースを作るより簡単であることは想像できるのではないでしょうか?。

最近では、HTMLファイルをそのまま、ソフトウェアの操作説明書として提供するオンラインソフトの作者も増えています。ヘルプの目的からすれば、これでも十分その役目は果たしているといえるでしょう。しかし、もう一歩踏み込んで、それを.CHMという1つのファイルにまとめたい、あるいはAccessのあるフォームから特定のトピックを直接表示させたいといった要求も当然あるはずです。そこで登場するのが、今回のAccess Studyのテーマである「HTML Help WorkShop」(以降、略して「HHW」とします)です。このHHWは、Office2000 Developer に付属する、ヘルプ作成ツールです。HTMLファイルを中心とした複数のソースを統合し、それらを編集、そしてコンパイルすることによって1つのCHMファイルを作るための、ヘルプ開発の統合環境といえるでしょう。

しかし、残念ながらこのソフトは英語版です。ということは、そのヘルプも英語で書かれています。マニュアル「Microsoft(R) Office2000/Visual Basic プログラマーズ ガイド」には、もちろんその解説も載っていますが、かなり取っ付きにくい内容になっています。HHWの画面説明などもないので、実際のところ、どうHHWを操作するのか分かりません。そこで、Access Studyの本シリーズでは、HHWのヘルプやマニュアルを見て「ヘルプはHTMLファイルのままでいいかな」とあきらめてしまった方や、初めてヘルプ作成にトライしてみようという方のために、HHWによるHTML作成手順を、本当に基本的な部分だけですが(それでもそれなりに十分なヘルプが作れます)、解説していきたいと思います。


※「HTML Help WorkShop」は、Office2000 Developerに付属するものです。しかし、「Microsoft(R) Office2000/Visual Basic プログラマーズ ガイド」によれば、HTML Help のWebサイト(http://msdn.microsoft.com/workshop/author/htmlhelp/default.asp)からこのツールをダウンロードできるかのような記述があります。ただし、ライセンスがどういう扱いになっているかは分かりません。英語に詳しくないので、誰でも使っていいのかどうか責任は持てません。その確認も含めて、一度アクセスしてみるのもいいかもしれません。同ガイドには、サードパーティ製のヘルプ作成ツールの情報もあると記されています。


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